
秋の福井を旅するなら、ぜひ味わってほしいのが「里芋(さといも)」です。
ほっくり、ねっとり、とろけるような食感――。この季節、福井の食卓には欠かせない味覚。
なかでも勝山市や大野市を中心とする奥越(おくえつ)地方は、全国でも知られる里芋の産地です。
ブランドで言えば「越前さといも」や「上庄さといも」が有名ですが、共通しているのは“奥越の自然”が生み出す上質な味。
今回は、その美味しさの理由と、地元で愛される食べ方をご紹介します。
奥越の里芋が特別に美味しい理由

奥越前(勝山・大野)は、白山連峰のふもとに広がる山あいの地。
清らかな九頭竜川の水と、肥沃で水もちの良い粘土質の土壌が、里芋栽培にぴったりの環境をつくっています。
昼夜の寒暖差が大きく、雪深い冬を迎えるこの土地では、ゆっくり時間をかけて芋が育ち、身の締まりがよく煮崩れしにくいのが特徴です。
農家では、親芋の選定から収穫、泥落としまで丁寧に行い出荷しています。
そのため、全国の料理人からも高い評価を受ける“煮くずれ知らずの逸品”として知られています。
ねっとり、ほくほく。奥越産里芋のおいしさの秘密
奥越の里芋は、小ぶりながらもねっとりとした粘りと上品な甘みが自慢。
煮ても崩れにくく、口に入れるとほろっととろけます。
皮がやわらかいため、薄皮を少し残して調理すると旨みが逃げず、より深い味わいに。
でんぷん質が多く冷めても硬くなりにくいので、煮物・汁物・鍋料理にぴったりです。
秋から冬にかけて、福井の家庭では毎日のように食卓に上がる“ぬくもりの味”です。
地元の人に聞いた!おすすめの食べ方

● 煮っころがし
醤油とみりん、砂糖でじっくり煮込むだけのシンプル料理。
里芋のとろみがタレを包み込み、つやつやとした照りが食欲をそそります。
出来立ての熱々も、翌日の味しみ具合もどちらも格別です。
● のっぺい汁
里芋のとろみが汁全体を包む郷土料理。
人参、ごぼう、鶏肉などと一緒に煮込み、寒い日にぴったりの一椀です。
● 里芋サラダ
ゆでた里芋を潰してマヨネーズで和えるだけ。
じゃがいもよりもなめらかで、もっちりとした食感がクセになります。
● 里芋と鶏肉の照り焼き丼
とろみのあるタレがご飯とよく絡み、ボリューム満点。
お子さまにも人気の定番メニューです。
地元住民おすすめの「洗い子(あらいこ)」とは?

福井県の奥越地方では、皮をむいた状態で販売される“洗い子(あらいこ)”と呼ばれる里芋があります。
これは、外皮をむき、薄皮だけを残した状態の芋で、調理の手間がかからず、すぐに使える便利な食材。
薄皮がうまみを閉じ込めるため、煮物にしても味が抜けにくく、しっとりとした口あたりになります。
地元では、味噌汁の具や炒め煮、芋だんごなどにもよく使われ、家庭の常備野菜として親しまれています。
里芋のおいしさを長持ちさせる保存方法
里芋はとてもデリケートな野菜。保存方法を間違えると、すぐに傷んでしまうこともあります。
ここでは、地元農家が実践している基本の保存方法をご紹介します。
● 常温保存
- 風通しのよい場所で乾燥させる。
- 新聞紙で包むか紙袋に入れ、直射日光を避けて保管。
- 濡れている場合は、水気をよくふき取ること。
- 冷蔵庫に入れると低温障害を起こすためNGです。
● 長期保存(冷凍)
- 皮をむいてカットし、ジッパー付き袋に入れて冷凍庫へ。
- 解凍せず、そのまま調理OK。煮物や汁物に便利です。
おいしく仕上げるための下処理と皮むきのコツ
里芋を調理する前には、少し手をかけることでおいしさがぐっと引き立ちます。
ここでは、地元の主婦たちが実践している“かゆくならない下処理方法”をご紹介します。
● 鍋で茹でて皮をむく方法(汁物・豚汁向き)
- 里芋を水でよく洗い、表面の泥を落とします。
- 鍋に里芋を入れ、かぶる程度の水を加えて加熱。
- 沸騰したら蓋を取り、2分ほど茹でます。
- 火を止め、流水で冷まし、手で触れる温度になったら指で皮をスルッとむきます。
※ぬめりが強い場合は、塩を軽くもみ込むと扱いやすくなります。
● 電子レンジを使う方法(少量調理向き)
- 洗った里芋を耐熱容器に入れ、ラップをふんわりとかけます。
- 500Wで100gあたり約3分加熱。竹串がスッと通る程度が目安です。
- 冷ましてから皮を指でむきます。
● 薄皮を残す「洗い子」風のむき方(煮物・炒め物向き)
- 里芋を洗い、泥を落とします。
- 丸めたアルミホイルで表面をこするように皮をむきます。
- 水中でこするとむきやすく、旨みを保ったまま調理可能。
※むきすぎるとぬめりが出やすくなるので、軽くこする程度がコツです。
※かゆくなりやすい方は、手袋を着用して作業してください。

どこで味わえる?どこで買える? 奥越の里芋グルメスポット
旅先で味わうなら、地元の直売所や飲食店がおすすめです。
勝山・大野エリアには、新鮮な里芋を使った料理や加工品を楽しめるスポットが点在しています。
- 道の駅 恐竜渓谷かつやま
秋になると新鮮な里芋がずらり。皮が剥かれてすぐに調理できる「洗い子」里芋も販売されます。 - スキージャム勝山内 レストラン グランドカフェ
秋限定メニューとして、地元野菜を使った料理のなかに里芋が登場することも。 - 道の駅 越前おおの 荒島の郷(大野市)
奥越の特産品が一堂に。洗い子はもちろん、里芋の箱売りもありますよ。 - 地元スーパーマーケット
地元農家さんの里芋の販売のほか、コロッケなどの総菜メニューにも登場します。
お土産として購入する場合は、勝山市や大野市の道の駅で購入するのがオススメです。オンラインで購入する場合には、ふるさと納税を活用する手もありますので、ぜひ検討ください。 家庭で手軽に“福井の秋の味覚”を再現できます。
秋の旅とともに楽しむ、里芋のある風景
福井・奥越の秋は、里芋だけでなく、紅葉や温泉、地酒など魅力が満載。
紅葉の越前大仏や、苔の美しい平泉寺白山神社を散策したあと、温泉宿で味わう里芋の煮物や芋汁は格別です。
“福井の秋を食べる”という旅のテーマには、まさにぴったりの一品。
また、冬には「里芋のとろみ鍋」など、寒さを楽しむ料理としても親しまれています。
奥越の食文化を象徴する存在として、里芋は地域の人々にとっても“ぬくもりの味”です。
まとめ:旅して味わう、奥越の秋グルメ

粘り、甘み、そして優しい口あたり――。
奥越の里芋は、福井の自然と人の丁寧な手仕事が育てた秋の宝物です。
地元で食べると驚くほど濃い味わいに出会えるはず。
旅の途中で味わって、お土産に持ち帰って、福井の秋をまるごと感じてみてください。